水溶性食物繊維「環状四糖水あめ」の製法と各種性質を発表
- 日本農芸化学会2021年度大会で6演題 -

  • 研究開発

株式会社 林 原

このたび、NAGASEグループの株式会社林原(本社:岡山市北区下石井 代表取締役社長:安場直樹)は、水溶性食物繊維「環状四糖水あめ」の工業スケールでの製法を確立し、各種性質を確認いたしました。
環状四糖水あめの主成分である環状四糖は、グルコース4分子が環状に結合したユニークな構造を持つ低分子の食物繊維です。環状四糖は、日本酒や酒粕のような発酵食品に含まれており、日本人が古来より摂取してきた食経験のある糖質です。
なお、環状四糖水あめの製法、物性、安全性、生体への影響などについての研究成果を、日本農芸化学会2021年度大会(3月18日~21日:宮城県仙台市 東北大学、オンライン開催)において発表する予定です。

環状四糖水あめは、グルコース4分子が環状につながった環状四糖(シクロニゲロシルニゲロース;CNN)を主成分とする水あめ形態の食物繊維素材で、澱粉に林原独自の酵素を作用させて作られます。製法検討を重ねた結果、食物繊維含量が高く、粘度が低い物性で、食品応用しやすい食物繊維素材を得ることができました。
今回の学会においては、環状四糖水あめの製法、物性、消化性や最大無作用量などの安全性、エネルギー、また、整腸作用や腸管免疫の増強作用などの機能性、さらに主成分である環状四糖のインスリン抵抗性改善効果など、合わせて6演題の発表を行う予定です。


■日本農芸化学会2021年度大会発表スケジュール
2021年3月19, 20日 質疑応答コアタイム時間13:00-13:30 (オンライン開催)
「環状四糖(CNN)水あめの調製法の検討」
「環状四糖(CNN)水あめの工業スケールでの調製とその構造および基礎物性」
「環状四糖(CNN)水あめの諸性質と下痢に対する最大無作用量」
「環状四糖(CNN)水あめの消化性および整腸作用」
「環状四糖(CNN)水あめのエネルギー評価とヒト腸内発酵性」
「環状四糖(CNN)の摂取が高脂肪食誘導性肥満マウスのインスリン抵抗性に及ぼす影響」

製法、物性および各種性質に関する詳細は、次の通りです。

〇環状四糖水あめの製法
工業化を視野に入れた製法検討の結果、土壌微生物由来酵素、α-グルコシルトランスフェラーゼ、α-イソマルトシルトランスフェラーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)、さらに枝切り酵素を組み合わせることで、食物繊維含量が高く、低粘度で食品応用しやすい環状四糖水あめの製法を確立した。本素材の製法は、酵素法のため反応条件がマイルドで安全性が高く、環境負荷が少ないサステナブルな製法といえ、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも貢献が期待される。

〇環状四糖水あめの組成および物性
環状四糖水あめは、環状四糖のほか、分岐環状四糖を含有している。環状四糖構造の含量を表す総環状四糖量は47%で、栄養成分としての食物繊維含量は76%である。単糖の含量は5%で、DEは14であった。結合様式は、α-1,6結合とα-1,3結合がそれぞれ30%程度を占め、澱粉由来のα-1,4結合は10%程度まで減少していた。重量平均分子量は、約800 Daで食物繊維素材としては低値である。粘度は四糖水あめである『テトラップ®』(弊社製造品、主成分:マルトテトラオース)と同等で、市販の水あめと同等の取り扱いが可能である。また、甘味度25であり、程よい甘味を有している。結合様式や分子量は味質や物性に影響するため、環状四糖水あめのもつユニークな結合様式や分子量の小ささを活用すれば、既存の食物繊維素材では難しかった食品応用が可能になると期待される。

〇環状四糖水あめの最大無作用量
下痢に対する最大無作用量は、健常成人20名で調査した結果、0.88g/kg-体重であった。このことから、環状四糖水あめは一般的な食物繊維素材と同様のオーダーで安全に幅広い食品に配合できることが確認された。

〇環状四糖水あめの消化性およびエネルギー
環状四糖水あめの消化性をin vitro消化性試験および経口負荷試験にて確認した。環状四糖が消化されないため環状四糖水あめの消化率は低く血糖値はグルコース投与時に比べ約6割であった。健常成人13名に環状四糖を単回摂取した際の腸内発酵性を呼気中の水素ガス濃度より求めたところ、発酵は認められなかった。そのため環状四糖のエネルギー換算値は0 kcal/gとなり、環状四糖水あめはその糖組成および消化性から、エネルギー換算値は2 kcal/gと算出された。

〇環状四糖水あめの整腸作用
ラットに環状四糖水あめを2週間継続摂取させたところ、糞便の重量および水分含量の増加、盲腸内容物におけるpHの低下、短鎖脂肪酸の増加が認められ、整腸作用を有することが示唆された。また、盲腸内容物のIgA量の増加も認められたことにより、腸管免疫の増強作用も示唆された。

〇環状四糖のインスリン抵抗性改善効果

食餌誘導性肥満マウスに高脂肪食とともに、環状四糖を20週間飲水摂取させたところ、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRが低下し盲腸内菌叢の変化が見られた。また、経口糖負荷試験を行ったところ、血糖上昇曲線下面積(AUC)は低下傾向であった。これらから、環状四糖の摂取は肥満にともなう耐糖能およびインスリン感受性の低下を緩和し、さらに高脂肪食負荷時の盲腸内菌叢を変化させることが示唆された。

◆本プレスリリースに関するお問い合わせ先
株式会社 林 原 広報室 担当:小林 TEL:086-224-4315

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