単糖から多糖まで、糖質摂取後の血糖上昇抑制作用を確認
水溶性食物繊維「イソマルトデキストリン」の機能に期待
- 第70回日本栄養・食糧学会大会で発表 -

  • 研究開発

株式会社 林 原

このたび、NAGASEグループの株式会社林原(本社:岡山市北区下石井 代表取締役社長:森下治)は、水溶性食物繊維「イソマルトデキストリン」の生理機能として、グルコース摂取後の血糖値の上昇抑制作用を確認しました。一般的な食事に含まれる糖質は、小腸でグルコースに分解された後、体内に吸収されることが知られており、イソマルトデキストリンによる血糖上昇抑制作用は、食後の血糖値の上昇を穏やかにすることによって、メタボリックシンドロームや糖尿病の予防に寄与するものと期待されます。 なお、この作用については、5月13日から開催される第70回日本栄養・食糧学会大会(神戸市・西宮市)において、発表いたします。

イソマルトデキストリンは、酵素の作用によって澱粉から製造される、新しい水溶性食物繊維です。甘さはほとんどなく無臭で水によく溶け、安定性にも優れています。これらのことから幅広い食品・飲料に配合が可能で、慢性的な食物繊維不足を補い、健康的でよりよい生活の実現に貢献する素材として期待されています。すでにイソマルトデキストリンの生理機能として、腸内菌叢改善作用、便通改善作用などがヒト試験により確認されています。

現代社会においては、食生活の多様化と運動機会の減少に伴い、メタボリックシンドロームの増加が問題となっています。特に、食後高血糖は2型糖尿病発症に先んじて現れ、糖尿病ではごく一般的な現象となります1)。日常生活において食後の血糖値を管理し、その上昇を穏やかにすることは、メタボリックシンドロームや糖尿病を予防するために、重要であると考えられています。このような背景のもと、林原ではイソマルトデキストリンの食後高血糖に与える影響を検討しました。

○試験方法と結果
グルコース(単糖)摂取後に血糖値の上がりやすい健康な男女13名を対象に、グルコース50 gとイソマルトデキストリン5 gを含む水溶液(IMD群)と、グルコース50 gのみを含む水溶液(対照群)を摂取させ、それぞれを摂取したときの血糖値の変化量の推移について比較しました。その結果、グルコースのみを摂取したときに比べ、イソマルトデキストリンを同時に摂取したときには血糖値のピークが有意に低値となり、摂取前から摂取120分後までの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)も有意に低値となりました。同様の作用が、砂糖(二糖)や澱粉の部分分解物であるデキストリン(多糖)を摂取した場合にも確認されました。以上のことから、イソマルトデキストリンは一般的な食事に含まれる糖質摂取後の血糖上昇を抑制することが明らかとなりました。

グルコース(単糖)摂取後の血糖値の推移

平均値±標準偏差 * p<0.05 vs 対照群

120分後までのAUC

平均値±標準偏差 * p<0.05 vs 対照群

また、本大会において、この血糖上昇抑制作用に加え、満腹感持続作用についても発表する予定です。

○今後の可能性
飲料に多く含まれるグルコース(単糖)、甘味料として菓子などに広く用いられている砂糖(二糖)、そして麺やごはん、パンなどの主食に多く含まれる澱粉(多糖)を摂取したときのそれぞれで血糖上昇抑制作用が確認されたことから、水溶性が高く、食品への配合が容易なイソマルトデキストリンは、血糖値を気にする現代人の様々な食事シーンにおいて、広く活用が期待されます。

■イソマルトデキストリンとは・・・
林原が独自に開発した酵素の働きにより、澱粉から製造される水溶性食物繊維。多分岐a-グルカンの一種。イソマルトデキストリンは原料である澱粉に比べ、枝分かれ構造を多く有しており、消化されにくい性質を持っています。そのため、固形分当たり80%以上という高い食物繊維含量を示します。重量平均分子量は5,000で、カロリーは2kcal/gです。製造工程に酸触媒下での高温処理がないため、粉末は白色であり、水溶液の透明度は高く、また、溶解性にも優れ、20℃の水100 gに対し、70 g以上溶解します。においがなく、甘さもほとんどない(砂糖の20分の1程度)ため、食品に配合しても素材の味を損ねません。様々な生理機能として、腸内細菌叢改善作用、便通改善作用、下痢軽減作用、免疫調節作用、脂質代謝改善作用、血糖上昇抑制作用などが示されています。

■参考文献
1) International Diabetes Federation, 2007 Guideline for Management of PostMeal Glucose in Diabetes(2008)

■第70回日本栄養・食糧学会大会発表スケジュール
2016年5月14日 (西宮市 武庫川女子大学)
「水溶性食物繊維イソマルトデキストリンの血糖上昇抑制作用」
「水溶性食物繊維イソマルトデキストリンの満腹感持続作用」


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