01story

2021.06.01

自然の実りを余すところなくいかしきる 南信州・ドライフルーツメーカーの取り組み

自然豊かな長野県下伊那地域で、素材の持ち味をいかしたドライフルーツ作りを手がける『南信州菓子工房』。農産加工を通じて地域農業の活性化やフードロス削減に貢献するほか、製造時に出る糖液を用いてバイオマス燃料を生成するなど、サステナブルな取り組みをおこなっています。

干し柿と茶菓子の文化が息づく南信州で創業

穏やかな気候と南アルプスの自然に恵まれた下伊那地域は、古くより干し柿の産地として知られ、また「半生菓子」と呼ばれる、もなかやカステラ、ゼリーといった茶菓子の製造が地場産業として根付いてきました。
『南信州菓子工房』は、そんな風土のなかで2012年に創業。昔ながらの半生菓子の製造会社を営む家の長男であった木下裕亮さんが、「今までにない、新しいスタイルの半生菓子を作りたい」との想いを抱いて立ち上げた会社です。

その「新しい半生菓子」とは、地元産を中心とした柿やリンゴ、柑橘類などのドライフルーツ。
当時、グラノーラの人気とともに、人々がドライフルーツを口にする機会が増えてきたものの、ほとんどは外国産で、そのまま食べるには甘味や香料が強く、食感の固さも気になりました。もっと素材本来の風味や色をいかした、安心安全な国産ドライフルーツを作れば、多くの人がおいしく食べてくれるはずーー。
そう確信した木下さんでしたが、外国産に比べて倍以上の価格 になることもあり、実家の会社からは「売れっこない」との反応。そこで、独立起業して想いを貫くことにしたのです。

おいしいと思える商品を地道に作り続けているうちに、じわじわとその魅力が認められ、地元の大手スーパーが扱ってくれることになりました。さらには全国展開するコンビニエンスストアとの取り引きもスタートし、それからは年々生産量が増え会社も大きくなりました。

しっとり、やわらかな国産「半生」ドライフルーツ

代表商品となる「輪ぎりレモン」。輪切りのまま蜜漬けされたレモンはしっとり、つやつやとしていて皮までやわらかく色鮮やかです。
「今までのドライフルーツとは、全然違うでしょう」と、品質管理部長の大島亮さん。一口かじれば爽やかな甘酸っぱさが広がって、思わず笑みがこぼれます。

ドライフルーツとぷるぷるシリーズ

おいしさの秘密は、「真空濃縮」という独自開発の製法。これにより、果物に熱を加えることなくシロップ(糖液)を染み込ませることが可能となり、素材そのものの風味や色をしっかりと残すことができるのです。
シロップにも工夫があり、そこに林原のトレハロースが使われています。
砂糖だけのシロップでは、乾燥すると表面が結晶化して固くなってしまいますが、トレハロースを混合することで、日にちが経ってもやわらかさが保たれます。また、甘さが砂糖の38%と低甘味なので、果物本来の風味をいかした仕上がりになります。

「このドライフルーツの開発時、林原さんはシロップだけでなく、自社の製品に関係ないことにまで力を貸してくれたんですよ」と語る大島さん。半生ドライフルーツは非加熱であるぶん酸化が進みやすい性質があり、風味や安全性を保ちながらこれを防ぐ方法がなかなか見つからなかったそうです。
「困っていたら、当時の営業担当の方が調べて、他社製の材料を探してくれたんです。試してみたら見事にうまくいって、とても助かりましたね」と話します。

「もったいない」の気持ちから工夫が生まれる

阿南工場外観と排水処理設備

順調に売り上げを伸ばした半生ドライフルーツですが、製造工程においてひとつ問題がありました。
それは、果物を浸した後のシロップが残ってしまうこと。糖度の高いシロップはそのままでは排出できず、専用施設での処理が必要になります。そのコスト面もさることながら、環境に負荷をかけること、そもそも純粋に「もったいない」ということが、かねてからの悩みでした。

そこで同社は、糖液を分解・浄化する設備を導入。処理工程で生成するメタンガスを工場の燃料として再利用し、CO2削減につなげるという、先進的な取り組みをおこなっています。
併せて、フルーツのエキスがたっぷり溶け込んだシロップを、別の製品の材料に活用。昔ながらの半生ゼリー菓子に新しい魅力を加えた「ぷるぷるシリーズ」を開発しました。
もっちりした弾力のある食感は、トレハロースの得意分野。林原の用途開発セクション『L’プラザ』のスタッフたちはシロップを試飲し、「こんなにおいしいものを活用しないのはもったいない!」と、積極的にレシピ開発に協力しました。

「ぷるぷるシリーズ」にはシロップにドライフルーツの端切れなども刻み込んでおり、贅沢なフルーツ感が味わえると評判に。フードロスや環境負荷を減らしながら、より価値の高い商品へとアップサイクルすることに成功しました。

農産加工メーカーとして、環境へも意識を

大分佐伯ファームレモン農場とFSSC22000取得の本社第二工場

『南信州菓子工房』のドライフルーツ作りには、地域の生産者を守るという側面もあります。
材料にするのは、味は申し分ないけれども少しキズがあったり形が規格外だったり、生食用として市場に出せないもの。一般的にこうした規格外品は一律に低い値段で売りさばかれるか、もしくは廃棄されるしかありませんが、同社ではこれをきちんと品質に見合った価格で買い取り、無駄なく加工して商品にしています。
また2019年には、みずから農業にも参入。生産者不足で遊休化していた大分県の農地を利用し、地域特産のレモンを栽培しています。

このように、安全でおいしいお菓子を作ることからさらに一歩進め、サステナブルな取り組みに挑戦する『南信州菓子工房』。そこにはどのような想いがあるのでしょうか。

木下社長は語ります。
「私たちの仕事は、農家の方によい農産物を作っていただけて初めて成り立つもの。異常気象や自然災害で農作物ができなくなれば、私たちの仕事も続けていけませんから、微力ながらも自然環境保護に意欲的に取り組んでいます」。

木下社長(4列目)、大島部長(2列目左)と従業員の皆さま

また、想いは次代を担う若い世代にも及びます。
「会社を始めたころは、とにかく自分の作りたい商品を作れればそれで満足でした。しかし、おかげさまで会社が大きくなり、毎年新入社員が入ってきてくれるようになると、彼らの未来に目が向くようになったんですね。
地道な作業の多い製造の現場だからこそ、社員たちにはずっと誇りをもって働いてほしい。そのために、どのような会社であるべきかを考えて、いいと思うことはなんでもやってみようと思っています」。

林原でも、製品の提供やレシピ開発への協力を通じ、これからも南信州菓子工房株式会社の取り組みを後押しさせていただきたいと考えています。

林原が注目するサステナブル・ポイント南信州菓子工房株式会社

  • ●少しのキズや規格外のため市場に出せない果物をドライフルーツに利用することで、フードロス削減に貢献。
  • ●製造過程で残るシロップを新たなお菓子にアップサイクルし、フードロス削減と環境負荷低減に貢献。
  • ●生産者不足で遊休化していた農地を利用し地域特産のレモンを栽培することで、地域の活性化に貢献。
  • ●排水浄化設備を利用して再生可能エネルギーを創出し、CO₂の排出を削減。