02story

2021.10.01

カカオとチョコレート。離れたふたつの 世界をつなぐ、コロンビアでの取り組み。

南米コロンビアと日本を股にかけ、カカオ生産国とチョコレート消費国とを結ぶ仕事に取り組む『カカオハンター®』の小方真弓さん。
2003年から生産国への旅を始め、2010年よりコロンビアでカカオの調査、生産指導などの活動に従事。同国のカカオ生産の現場を改善し、国内で高品質なチョコレートに加工・輸出できるまでに育て、さらに市場価値の向上を目指して活動を続けています。

「もっと知りたい!」との好奇心が原点

「カカオ生産者の多くは、チョコレートを食べたことがない」という話を、耳にしたことがありませんか?
消費地と原料生産地との間に、地理的にも、そして文化的にも大きな隔たりがあるのが、チョコレートという食べ物。そこには旧宗主国と従属国という歴史も関係し、双方の経済水準がまったく異なるという厳しい現実があります。

小方さんの活動のスタートは、製菓用チョコレートメーカーに勤めて6年目、28歳のときのこと。日々チョコレートに関わりながらもカカオのことをなにも知らない自分に疑問をもち、中南米を中心とした生産国で学ぶことを決意したといいます。

ざっと経歴をうかがうだけでも、その行動力は驚くべきもの。
まずは英語を学ぶことから始め、当時ようやく普及が加速してきたインターネットを利用して、自力で農園を探したそう。外国人が訪れることのない奥地の農園にも独自で飛び込み、現地の人と信頼関係を築いていきました。

優れたカカオを育て、市場価値を高めたい

小方真弓さん(CACAO HUNTERS JAPAN代表取締役)右は共同設立者のカルロス・べラスコさん【写真左】まだ見ぬカカオを探すため、ジャングルを進むことも【写真右】

中南米、中でもコロンビアのカカオを初めて見た小方さんは、その多様性に満ちた魅力に、ひと目で惹きつけられたといいます。
ポテンシャルの高い品種のカカオを探し出し、現地の農家に加工技術を指導し、高品質なカカオ豆づくりを始めた小方さんでしたが、そこで衝撃的な現状を知ることに。
「そもそもカカオの取引の場に、『品質に対する対価』という概念がなかったんです」。

よいものに対して付加価値をつけるという仕組みは稀で、国際市場に連動する取引価格は非常に安価で推移していました。そしてまた農家の人も、自身でそれを打破する術を持ち合わせていませんでした。
取引の場に圧倒的な経済ピラミッドが立ちはだかり、カカオ生産者の経済水準はその重労働に比例することなく低いまま。
この現状を変えて対等なビジネスモデルを図り、生産者の生活向上と持続的なカカオ生産を可能にすることが、その後の小方さんのライフワークになったのです。

一つひとつ手作業でカカオの実を収穫し【写真左】丁寧に種を取り出して【写真中】約1週間発酵させ【写真右】乾燥させたものが、チョコレートの主原料「カカオ豆」となる

小方さんがなによりも重要視したのは、とにかく現地にお金を生むこと。
納めたカカオが迅速に現金化される仕組みをつくったり、生産者組合が各地域の生産者から発酵センターに届くフレッシュカカオをその場で現金化できるよう代金を前払いしたりと、さまざまな工夫をしたといいます。
そうした取り組みが各国のNGOや生産者を支援する米国の非営利団体の目に留まり、支援を受けて設備投資ができるように。2013年には国内にチョコレート工房を作り、2016年に工場へ拡大、これにより現地の人たちの手で製造・販売できるようになりました。

生産者たちに芽生えた、品質への誇り

もうひとつ力を入れたのは、「カカオ側」と「チョコレート側」、互いの世界の人たちがふれあう機会を設けること。
国内カカオの品質コンクールを発起し、スイスのNGOの計らいにより1位をとった生産者を、パリで開かれる世界最高峰のチョコレート見本市「サロン・デュ・ショコラ」への視察旅行に連れていく道筋をつくりました。
また、生産者たちを日本に招き、百貨店のバレンタイン催事でセミナーを行ったり、実際に自分たちの手でチョコレートを販売してもらったりしたこともあるそうです。

「生産者の方には、自分たちの作ったカカオが、どのような形になってどんな人に届いているのかを、ぜひ自分の目で見てもらいたかったんです。食べてくれる人の笑顔を間近で見たみなさんは、それはもうものすごい刺激を受けて自国に帰りますよ」。

技術を向上し、世界を知ることで、コロンビアでカカオに関わる人々の間に、確かな誇りが芽生えていきました。

時を同じくして、世界的に「BEAN to BAR」(チョコレートの作り手が、カカオ豆の選定や焙炒の工程から一貫して手がけること)の動きが出てきたことも後押しに。各国の一流ショコラティエがコロンビア産カカオの価値を認めるようになり、販売市場も広がっていきました。

コロンビア北部・アルアコ族の皆さんと
アルアコ産カカオを使用したチョコレートは、2015年にチョコレートの国際コンクールに初出品しマイクロバッチ・プレーン/オリジン ダーク部門で金賞を受賞

こうした説明の後、あらためて小方さんは語ります。
「私たちの行っていることは『支援』ではないんですね。『品質』に対する意識の点で『フェアトレード』ともちょっと違う、『ダイレクトトレード』です。
世界の人を魅了する質の高いカカオを作って、その品質に対して正当な対価をいただく。これを将来まで『持続できる』ビジネスにすることが、一番大事なんです」。

素材の個性をいかす製品づくりを

『カカオハンターズ』オンラインストアで販売している板チョコレートは、中身もパッケージもすべてコロンビア国内で製造されたもの。産地の異なるカカオで作られたチョコレートを食べ比べてみると、それぞれに個性あふれる奥深い味わいに驚かされます。
その特別な味と香りは有名パティスリーや星付きレストランのシェフからも愛され、これを用いたさまざまなレシピが生み出されています。

カカオハンターズの板チョコレート【写真左】とカカオハンターズプラスのチョコスイーツ商品【写真右】

東京駅構内にあるアンテナショップ『カカオハンターズプラス』では、これらを素材としたチョコスイーツを販売。
商品開発を担当するパティシエールの田中路子さんは、日ごろからトレハロースをはじめとする林原の製品を高く評価してくださり、レシピに取り入れてくださっています。
例えば同店の人気商品のひとつであるチョコレートのジェラートでは、トレハロースのキレのよい味質により、カカオの香りをいっそう引き立てることができました。また、甘さを抑えながらも全体の糖量を上げることができるため、時間が経っても固くなりにくく、オペレーションの向上に役立っているそうです。
特に保存性が重要となるお土産向けの商品は、作りたてのおいしさを長く保つことができ、食品ロスの軽減にもつながっています。

また製菓に関連して、林原は、世界トップクラスのパティシエ団体「ルレ・デセール」に協賛し、活動をサポートしています。
「ルレ・デセール」は、優れた製菓技術を世界に伝える(ルレ=リレーの意)ことを活動目的とする団体。「カカオフォレスト」というプロジェクト名で、カカオ生産国への支援もおこなっています。

お話の最後に、
「私たちのやっていることは、絵の具職人みたいなもの。世界中のすばらしい画家たち(=パティシエやメーカー)が、この絵の具を使って、いろんな絵を描いてくれることが一番うれしいですね」と、瞳を輝かせて語ってくださった小方さん。
その言葉はまさに、素材メーカーである林原の想いに重なるもの。私たちは製品の提供を通じ、まだまだ続く小方さんの旅を応援していきます。

林原が注目するサステナブル・ポイントCACAO HUNTERS

  • ●カカオ(栽培からカカオ豆加工まで)の品質と生産性を高めるための指導を行い、持続的なカカオ生産の体制づくりに貢献
  • ●綿密な調査や開発を経てカカオ豆の品質を向上させ、その品質に正当な対価を支払うことで、生産者のQOL向上と地域経済の活性化へ貢献
  • ●現地での高品質なチョコレートの製造・輸出を可能にし、コロンビア産カカオの市場評価と海外競争力の向上に貢献