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サステナブル・ストーリー/
ナガセヴィータのWebマガジン

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2022.08.09

地域特産の和紙原料に新たな価値をミツマタエキス配合化粧品「結の香」

岡山県真庭市の山あいの集落で、かつて盛んに栽培されていた「ミツマタ」。古来より和紙や紙幣の原料として使われてきたこのミツマタに、産学連携の力でメラニンの生成抑制作用という新しい価値が見出され、肌にも環境にもやさしいオリジナルコスメが生まれました。地元ではこの開発をきっかけに、ミツマタ栽培の復興や和紙文化の伝承に向けた活動もおこなわれています。

「和の美肌」がコンセプトの、地域発コスメブランド

3つにわかれた枝先が特徴のミツマタ。中国名は「結香」(ジエシァン)で、「結の香」のブランド名はこれをヒントに名付けられた。
▲3つにわかれた枝先が特徴のミツマタ。中国名は「結香」(ジエシァン)で、「結の香」のブランド名はこれをヒントに名付けられた。
中国山地のふもと、岡山県北部に位置する真庭市・樫邑(かしむら)地区。
緑深い山々に挟まれたこの集落は、古来より和紙の原料となる植物「ミツマタ」の栽培が盛んで、特に日本紙幣に使われる「局納みつまた」では国内最大の生産地として知られていました。
その後、時代の流れとともに生産は縮小しましたが、地域の伝統産業を絶やさぬよう取り組みが続けられています。

「結の香」は、その樫邑地区のミツマタを使った化粧品シリーズです。現在「ホワイトセラム」(美容液)、「ホワイトリフトローション」(化粧水)、「ボタニカルクリア石鹸」の3アイテムがラインナップ。しっとり、ふっくらとした透明感のある素肌に導いてくれる品として、愛用者を増やしています。

▲結の香シリーズ

ミツマタ樹皮から抽出したエキスを美容成分として用いた化粧品は、世界でも初めて。ミツマタ樹皮エキスにメラニンの生成抑制作用があることを突き止め、商品化にこぎ着けたのは、これまで化粧品とはまったく縁のなかった真庭市の会社経営者、内藤靖史さんでした。

和紙職人の手肌の美しさにヒントを得て

▲紙漉きの様子。ミツマタ樹皮を茹でてさらし、糊と混ぜて紙液を作る。簾桁(すけた) を前後左右にゆり動かしながら紙液中の繊維を薄く均一にすくいとる。漉きあがった紙を脱水・乾燥させ、和紙が完成する。古来、紙漉きは糊の効きやすい厳冬期におこなわれてきた。

内藤さんが会長を務める会社「エイチケイ商会」は、長年にわたり燃料や米穀の取り扱いを本業としてきました。あるとき内藤さんがお米のギフト商品を企画し、そのパッケージを作るために地元の和紙工房を訪ねたことが、化粧品開発のきっかけだったといいます。

内藤靖史さん▲内藤靖史さん(株式会社YUNOKA 社長・株式会社エイチケイ商会 会長)

「上質で美しい紙を漉くために、和紙職人は凍るような冷たい水に素手をさらして作業するんですよ。でも、そんな過酷な作業を繰り返していても、職人さんの手肌は白くてすべすべ。酒造りの杜氏の手がきれいなことから麹の成分が着目されているように、ミツマタにも美肌の効果があるんじゃないかと、ふと気づいたんです」。

内藤靖史さん▲内藤靖史さん(株式会社YUNOKA 社長・株式会社エイチケイ商会 会長)

それからの内藤さんの行動力は驚くべきもの。 「地域の特産品であるミツマタに、新しい価値を創りたい」ーーその想いは大きなエネルギーとなり、周囲の人を巻き込んでいきました。

化粧品開発について右も左もわからないところからのスタートでしたが、足掛かりにと訪ねた先から次々と紹介の輪がつながり、コスメサイエンスに詳しい岡山理科大学の安藤秀哉教授と出会いました。
内藤さんはさっそく自分でミツマタの皮を煮出し、抽出液を安藤教授のもとへ持ち込んで評価を依頼。そこで詳しい分析をおこなったところ、教授自身も「今まで私が関わった中で一番の発見ですよ!」と驚くほど、メラニンの生成抑制に明確な効果があることがわかったのです。

その後、数々のハードルをクリアしながら商品化を進めていき、着想から4年が経った2017年、ついに「結の香 ホワイトセラム」を発売することができました。

商品は、和紙の里で生まれたオリジナルコスメとしてたちまち注目を集め、発売翌年には全国の地方新聞社が推薦・審査する「47CLUB こんなのあるんだ大賞2018」で、3万5000点の地域産品の頂点となる大賞を受賞。また2020年には岡山理科大学とエイチケイ商会との共同で、「メラニン生成抑制剤の発明」について特許を取得することもできました。

使う人も、作る人も、地域社会も幸せにする化粧品

「結の香」の原料に使われるミツマタは、もちろんすべて地元・真庭産。エキスを抽出した後の繊維質はそのまま和紙の原料になるので、廃棄ロスを防ぐことができます。
また、セット商品に使われているミツマタ和紙のオリジナルパッケージも、「結の香」ブランドを象徴する大切なアイテムです。ひとつひとつ表情の違う美しい和紙は、地元の「樫西和紙工房」によって手漉き・手染めされたもの。お客さまからは「空き箱も大事に利用しています」との声が多く寄せられているといい、和紙の魅力の再発見につながっています。

「結の香」の開発をきっかけに、樫邑地区ではミツマタ復興への気運も高まってきました。2019年には地域の有志がクラウドファンディングを立ち上げ、目標額を達成。支援金を使ってミツマタの植栽や体験学習などをおこない、子どもたちへの伝統文化の継承活動に役立てています。
▲(左)地元「樫西和紙工房」の手漉き・手染め和紙を使用したパッケージ
 (右)ミツマタの郷の再興を目指す地元有志によるミツマタの植樹
内藤さんは語ります。
「たまたま地域資源であるミツマタにすごい性質があることがわかったのだから、この価値をなんとしても地域のためにいかしたい、ただその一心でやってきました。単にお金儲けをしたいだけなら、ここまで一生懸命にはなれませんでしたよ」。

使い続けるほどに肌がうるおい、地域の産業も文化も元気になる化粧品。
想いに賛同して使ってくださる方の輪を広げていくことが、これからの願いです。

「結の香」に用いられるナガセヴィータ(Nagase Viita)の化粧品素材

さて、この「結の香」には、ナガセヴィータの素材も美容成分として使われています。

商品開発の過程で、ミツマタ以外の原料もできるだけ地元岡山に関わりのあるものを使いたいと考えた内藤さんが、みずからナガセヴィータの素材を指名してくださいました。

ホワイトセラムに含まれている「AA2G®(アスコルビン酸2-グルコシド)」は、そのままでは変質しやすいビタミンCに、ナガセヴィータの酵素技術を用いてブドウ糖を結合させ安定化した、ビタミンC誘導体。医薬部外品の有効成分として承認前例のある素材であり、メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ効果があります。

ホワイトリフトローションに使われている「グルコシルナリンギン」は、柑橘由来のフラボノイド成分「ナリンギン」に酵素の力でブドウ糖を結合させ、水溶性を大幅に高めて化粧品等へ配合できるようにしたもの。コラーゲン繊維を支える役割を持つエラスチンの産生と線維形成を促進し、肌のハリや弾力を高める効果のある、新しい素材です。

コスメティックの世界にもサステナブルな視点を

▲(左)摘果の様子。品質のよい実を収穫するため、果実が幼いうちに摘み取って数を減らす。
 (右)ナガセヴィータ(当時:林原)にEcoVadis社より授与されたゴールドメダル
このグルコシルナリンギンの原料となるのは、栽培途中で間引いたり落ちたりした柑橘類の果実。食用にならないものを化粧品素材へとアップサイクル(価値を高めた活用)し、廃棄ロスを削減しています。
またAA2G®では、製造過程で排出される栄養豊富な副産物を発酵原料や飼料として有効活用し、廃棄による環境負荷を低減しています。

近年、化粧品メーカーでは、人にも地球にも優しいエシカルな商品づくりへの意識が高まっています。化粧品の素材を提供するナガセヴィータも同様に、環境や人権に充分に配慮して開発・製造をおこなっています。 この取り組みが評価され、フランスのサステナビリティ評価機関EcoVadis社の2022年の調査で、スコアが上位5%の企業に与えられる「ゴールド」を獲得しています。(当時:林原)

「結の香」は地元・真庭で生まれたばかりのブランドですが、その背景に込められた地域社会への真摯な想いには、人々の心を動かす確かな力があるのではないでしょうか。
ナガセヴィータも引き続き、信頼されるサプライヤーとして、こうした想いのあるサステナブルな商品づくりを支えていきたいと考えています。

わたしたちが注目するサステナブル・ポイント株式会社YUNOKA

  • ●地域資源であるミツマタに、美容成分という新たな価値を見出し商品化することで、地域の活性化に貢献
  • ●地元産のミツマタを原料に使用することで、ミツマタ栽培の復興を支援
  • ●パッケージに地元産の手漉き和紙を使用することで、地域の伝統産業や和紙文化を支援